DESIGN

デザインとは:1(思考編)

デザインとは何でしょうか。
デザイナー達は自分なりの「デザインとは」の答えを持っている人が多いです。ですので、ここでは「絶対的なもの」や「正しいもの」ではなく、私個人が考えているデザインに関して解説したいと思います。何かのきっかけになれば幸いです。

目次
#1、デザイン ≠ アート
#2、なぜ → なぜなら
#3、センスは経験値&知識
#4、デザインピラミッド(デザインスキル)
#5、アウトプットされたデザインの分析

 

#1
デザイン ≠ アート

私はよく本屋に行ってデザインの本を漁っているのですが、デザイン書は「美術」のコーナーに入れられていることも少なくありません。デザインとは美術やアートと同じく「美しいもの」を作る分野だと考えている人も多いと思います。デザインは美術的な側面もありますが、一致はしません。

一般的にデザイナーは「センスのある人が天性的な能力でものづくりをしていく職業」だと考えられていますが、デザインというのは見る人・使う人という「デザイナーではない受け手」がいるから成り立つものです。一般的な価値観を忘れてデザインしたものが使いやすかったり見やすいはずがありません。

もちろん人が「美しい / 格好いい / 欲しい / 家に置きたい」と思ってもらうデザインにはセンスは必須ですし、人々が思いつかない視点からのアイデアや創作物を生み出す力を持っています。しかし「安全 /使いやすい / 読みやすい / 理解しやすい」を生み出す理論もデザインには必要なのです。

デザインは「理論(セオリー)と感覚(センス)の掛け合わせ」によって成り立っています。「格好いいけど使いにくいデザイン」は、ただの「ダメなデザイン」なのです。細かな話は#4の4で解説します。

私がデザインとアートの違いを説明するときによく引用させていただいているのが、デザインエンジニア山中俊治さんがツイートされた以下の言葉です。

“絵の上手な友人に「じゃあこのパンフデザインしてくれないかな」って頼むのは、彫刻家に家を建ててくれと依頼するのと同じぐらい無謀な話なんです。美術とデザインの違い。”

これはデザインが上でアートがしたという意味ではありません。それぞれの役割が違うのです。デザイナー前田高志さんが著書「NASU本」の中で次のように語っています。

“デザインは動詞で、アートは名詞”

たしかに「デザインする」とは言いますが「アートする」とは言いません。なるほど。ちなみに時にデザインは、アートの力を借りることもありますし、アートにデザインの力を貸すこともあります。

 

#2
なぜ→なぜなら

ではどのようにデザインは作られるのでしょうか。
先に述べたようにデザインは理論的な側面が大きいです。デザインにおける理論的な側面とはどういうことかを超簡単に説明するとすれば「“なぜ”と問われたものを“なぜなら”で返せること」です。

例えば私は以前コンペで「ヘッド部分が回転するハンマー」をデザインしました。格好良いからなんとなくこの形状にした……わけではありません。このデザインに関して「なぜ→なぜなら」を当てはめるとこうなります。

・なぜこのようなデザインをしようと思ったのか?
→ なぜなら工具は無骨なフォルムが多く、一般家庭で使えるものが少なかったから。

・なぜヘッドが回転するのか?
→ なぜなら収納時にヘッド部分が邪魔になるから。

・なぜ白と黒なのか?
→ なぜならシンプルさを際立たせつつ、多くの人が選びやすい2色だから。

・なぜヘッド部分がシルバーなのか?
→ なぜならヘッド部分が塗装だとハンマーで叩いた時に禿げてしまうから。

・なぜヘッドの回転軸がシルバーなのか?
→ なぜならここがスイッチになっており、押せることを示唆するため。

といった具合です。ここに書いていないところも同様に考えて行っています。(ちなみに、これは「こんなハンマーあれば良くないですか?」という提案だったため、耐久性などは未来の素材や構造に期待しています。現状では回転軸に衝撃が集中して壊れてしまう可能性があるとのことで入選止まりでした)。

細部やフォルムの判断においてはセンスも必要ですが、プロダクトデザインの分野において、あまり「格好良いでしょ」というプレゼンはしません。なぜなら「格好良いでしょ」と説明してしまうとクライアントや判断する人が「いや、私は格好良いとは思わない」という「個人の好み」の舞台に上がってしまうからです。大切なのは個人的な好みよりも、ターゲットに刺さるか、どんな印象を与えたいのか、どう使われるかであり、判断者の好き嫌いではありません。

もちろん感想としての「格好良い」や「可愛い」というは、とても嬉しい言葉です。私も感想としてよく使いますし、作りながら「格好良いのできたー!」と自画自賛しながらテンションが上がることも多々あります。ですが、格好良い、可愛い、おしゃれ、デザイン性の高い、といった言葉は、デザイン決定の場において「私は好き」以上の意味を持つことは少ないです。アンティークの製品を見た時に、同じものを見ているはずなのに「格好良い」という人と「可愛い」という人がいますよね。言葉の基準が人によってバラバラなのです。

反対に「美しい」という言葉が出ることは多いです。「美しいというのも好みだろ!」という批判も飛んできそうですが、他の言葉と違ってズレが少ないのです。ここからはセンスの話になります。

 

#3
センスは経験値&知識

理論の話を中心に話してきましたが、理論だけでデザインすると堅苦しく、面白みのないものに仕上がります。みんなが感じる「いい商品だけど、何か嫌だ」という感覚を生み出す要因になることも少なくありません。
そこで必要なのが「センス(感覚)」です。

初対面の方に「デザイナーです」と話すと「センスあっていいですね、学生時代美術の成績が悪くて……」と返されることが多いです。ですが、デザイナーも美術の成績のいい人ばかりではありませんし、生まれ持ってセンスがいいわけではありません。時間をかけて培ってきたものです。

本を一冊も読んだことのない人が「いい小説を書きたい」と言っても無理ですよね。まず本とは何かを知り、様々な文や言葉と触れ合って少しずつ感覚を研ぎ澄ませていくのです。
デザインも同じです。デザインをするために良い製品、良いポスター、良いデザインをたくさん知り、「良いものとは何か」を感覚的に学んでいくのです。「美しさ」も同様です。センスというのは持って生まれてきた能力のことではなく「今までどれほど良いものと触れ合ってきたかという経験値」なのです。

また、知識によって得られるセンスもあります。
例えば部屋の配色を3色以内で構成するとオシャレに見える色数だと言われています。この3色を用いてグラフィックを作成する場合、70:25:5の割合で組み合わせると良い配色になりやすいのです。

実際の良いデザインの作り方に関しては第3弾目の記事で紹介しようと思います。

人の目というのは非常に繊細で鋭いです。「プラスチックにメッキで銀色にしたスプーン」と「金属製のスプーン」を見てもらうと大半の人が判別できます。しかし「どうしてそう感じたのですか?」と聞くと、わからない・なんとなくと話す人が多いです。この「なんとなく」の占める割合は非常に大きいです。ここを詰めるには理論だけでは成り立たないのでセンスは非常に大切です。

 

#4
デザインピラミッド(デザインスキルと思考のフェーズ)

では、ここからは少し「デザインスキル」に関して深掘りしていこうと思います。少し難しい話になりますが。

こちらは私の考えるデザインに必要なスキルを表した図「デザインピラミッド」です。下に行くほど思考、上に行くほど技術になります。最も重要で基礎の下側から順番に説明していきます。

 

第1層、斥候のマインドセット

これはジュリア・ゲレフ(Julia Galef)氏が提唱している考え方のことです。人々の思考は「兵士のマインドセット」と「斥候のマインドセット」に分類されます。

兵士のマインドセットは一般的に「確証バイアス」と呼ばれるもので、客観的で公平だと思っていても、私たちの判断は無意識下の「どちらに勝って欲しいか」に強く影響されているという考え方です。ジュリア・ゲレフ氏がこのような例を挙げています。

「死刑制度のような議論の多い政策に関する研究について読んだ時、自分が死刑制度を支持しているところに”死刑は効果的ではない”とその研究が示していたなら、どうにか難点を見つけたいという欲求を感じます。でも”死刑は有効”という結論なら良い研究だとすぐに納得します。逆もしかり。死刑反対の人もまた同様の反応をします」

つまり、人は自分がどちらを信じたいかという結果に対して都合のいい解釈をしてしまいがちであるということです。巷に蔓延る都市伝説や米国などでよく見られる政治的な対立もこういった思考が原因になることが多いです。しかも怖いことに、兵士のマインドセットを持つ人は「自身は中立の立場であり正しい」と信じているのです。

兵士のマインドセットが「戦って相手に勝つことが目的」であることに対し、もう一方の斥候のマインドセットは「どちらを勝たせようというのではなく、それが自分にとって都合が良く快適で綺麗なものではなかったとしても、本当の姿を可能な限り正確に素直に見ようとする」思考のことです。そのため、死刑は有効だと思っていたけどそうでないことを研究が示していたとしたら 「どうも自分の考えは間違っていたようだ」と考えることができます。

この斥候のマインドセットを持っていなければ、どんな素晴らしいエビデンスやデータ、素材を手に入れたとしてもプロジェクトを正しい方向へ進めることはできません。これはデザイナーではなくても大切な考え方であり、新たなものを生み出すデザイナーにとっては必須の能力と言えます。

TEDジュリア・ゲレフ「間違っているのに正しいと感じてしまうのはなぜなのか?」

 

第2層、クリティカル・シンキング(批判的思考)

デザインピラミッド2段目は批判的思考です。こちらは最近注目が集まっていますよね。この批判的思考はデザイナーの特筆した能力の一つと言っても過言ではありません。

この批判的思考を簡単に説明すると「物事の前提条件や常識とされていることさえも疑い、本質的かつ最適な解に辿り着く」という、哲学の分野で大切にされている「ゼロベース思考」に近い考え方です。また、当たり前だとされている事象に対し「なぜを繰り返し問う」ことで本質に近づくという手法も取られます。

ロバート・エニス(Robert H. Ennis)は批判的思考を以下のように定義づけています。

信念と行動の指針として、観察、経験、反省、推論、またはコミュニケーションから集められた、あるいはそれらによって生成された情報を、積極的かつ巧みに概念化し、適用し、分析し、統合し、評価する知的に訓練されたプロセスである。

エニスの定義によれば批判的思考は多くの注意と脳の機能を必要としており、批判的思考のアプローチが教育に適用されると脳の機能が向上し、同じ資料だとしても異なる方法で多くの角度や視点から検証・観察・理解が可能になるとのことです。

例えば「ここにかける橋をデザインしてください」という依頼をされたとします。
通常は「どのような橋が良いだろうか?」と考えますが、批判的思考では「本当にこの場所でいいのか?」や「なぜ橋が必要なのだろう?」というポイントから考えます。

そして、それが「人の往来を増やすため」なのか「食べ物を取りに行くため」なのか「観光客を呼び込むため」なのかを考え調査します。もしかしたら景観を壊すかもしれない、飛び石で渡ってもらう方が観光客は面白がってくれるかもしれない、自然破壊につながり生態系が崩れるかもしれない、という「そもそも本当に橋が必要なのか?」まで考えます。

デザイナーが革新的な提案ができることが多いのは、この批判的思考を身につけている人が多く「皆がそもそも考えなかった事柄まで考えて提案する」からなのです。

この批判的思考では「起点になるポイント(なぜ)」を探すフェーズでしたが、この「なぜ(WHY)」を起点に進めて行く大切な考え方が次のフェーズ「ゴールデン・サークル」です。

 

第3層、ゴールデン・サークル

このゴールデン・サークルは作家であり講演者のサイモン・シネック(Simon Sinek)氏が提唱している理論です。ゴールデン・サークルに関するTEDの講演「優れたリーダーはどうやって行動を促すか」は5,000万回以上再生されている伝説的な講演ですし、サイモン・シネックの著書「WHYから始めよ!」も事業構想や企業の教育現場では必ず読めと言われるレベルの本なので、ゴールデン・サークルに関しては知っている方も多いと思います。

ゴールデン・サークルは非常にシンプルです。人は「何を」ではなく「なぜ」に動かされる、WHY → HOW → WHATの順番に思考し伝えるだけで人々は動く、というものです。

ですが、案外このWHYを考えていない人が多く、失敗しているのです。なぜこのポスターをデザインするのか、なぜこの製品を製造しているのか、なぜ会社を経営しているのか。

※ ここで注意すべき点として「なぜ」に「お金を儲ける」は含まれないとサイモン・シネックは注意しています。お金に関してアメリカの起業家であり投資家のベン・ホロウィッツ(Ben Horowitz)氏はこのように話しています。「会社にとって利益は空気のようなもの。それがなくては死んでしまうが、人は空気を吸うために生きているわけじゃない。会社もそれと同じだろう」。つまり利益を追求している会社には人々は惹かれないのです。

話を戻しますが、ミレニアル世代(2000年以降に成人を迎えた世代)の人々は「会社に共感できるかどうか」で製品やサービスを選ぶ傾向にあるようです。つまり会社のWHYに共感できるかどうかです。

サイモン・シネックはアップルを例に挙げてこのように語っています(読みやすいように少し改変しています)。

アップルが他の会社と同じだったらこんなCMを作るでしょう。「我々のコンピューターは素晴らしく美しいデザインで、簡単に使えてユーザフレンドリーです。ひとついかがですか?」。我々のほとんどはこんな風に伝えています。マーケティングや売り込みも、我々の対話のほとんどがそんな風に行われます。何をして、どう違い、どう優れているかを述べ、相手に何か行動を期待します。購入とか投票とかの類です。私たちは新しい法律事務所を開所しました。最高の弁護士たちと大手のクライアントを抱えています、私たちは常にクライアント第一で行動します、これが私達の車のニューモデルです。低燃費でシートは総革張りいかがですか?これでは心を動かされません。

アップルならこんな風に伝えます。「我々のすることはすべて世界を変えるという信念で行っています。違う考え方に価値があると信じています。私たちが世界を変える手段は美しくデザインされ、簡単に使えて親しみやすい製品です。こうして素晴らしいコンピューターができあがりました」。全然違うでしょう?買いたくなりますよね?今したのは情報の順番を逆にすることでした。これが示すのは、人は「何を」ではなく「なぜ」に動かされるということです。

これをみると明確ですよね。
サイモン・シネックはTEDのプレゼンでは他にライト兄弟、キング牧師などを例に説明しています。著書「WHYから始めよ!」ではサウスウエスト航空、スターバックスなどを例に説明しています。ぜひ見てみてください。

このゴールデン・サークルに関して、サイモン・シネック氏の提唱しているものの改良版を作成したので、またいつか細かく解説したいと思います。

TEDサイモン・シネック「優れたリーダーはどうやって行動を促すか」

 

第4層、デザイン

お疲れさまです。やっときましたデザインです。
まずはコーヒーでも飲んで落ち着きましょう。

このフェーズは実際にデザインする時に「こういう視点で見て考えています」というものです。私はデザインそのものを考える時「哲学・審美性・機能性・実現性」の4つで成り立っていると考えています。この構成に関しては「デザインの断面の1種類」で、他に様々な意見があると思います。違う意見を持っていても間違いではありませんし、否定するつもりもありません。

4つを簡単に説明するとこのような感じです。
・哲学  :ブランド、コンセプト、物語性、ストーリー、背景など
・審美性 :バランス、美しさ、皆が魅力的に感じるフォルム、部屋に置きたくなるなど
・機能性 :安全性、使いやすさ、可読性、見やすさ、アフォーダンス、ミスを防ぐなど
・実現性 :実現性、製作可能か、製造方法、予算、納期、プロセスなど

どれが欠けてもデザインはできません。これらを踏まえながらアイデアを水平展開していきます。一つのアイデアに絞ってしまうと、行き詰まった時に戻ったりするのが大変なので、数案を並行して進めていきます。

哲学(コンセプトやブランド)というのはデザインを勧める上で軸になるものです。その軸を中心に、何度も何度も審美性や機能性や実現性を展開・検討・修正などを繰り返し、スパイラルのように完成度を高めていきます。

この4つですが、私に関しては「今、機能性を考えている!」などと意識することはあまりありません。むしろドロドロに混ざり合ったような状態で、境界線も曖昧です。それぞれの要素はどれも繋がっているのです。

 

第5層、スキル

頭の中でデザインアイデア作ったら、それを出力するためのスキルが必要になります。そのスキルというのは、絵のうまさや、イラストレーター能力、レタッチ能力、言語能力など、自分の頭の中を皆のわかる状態にするための「脳と紙を繋ぐ能力」です。

このスキルというのは「手法」であり、アイデンティティとして確立が難しい分、今までに無い手法を発見・昇華させた場合、非常に強いアイデンティティになりえます。
例えば、Adobeの人以上にイラストレーターを使いこなしているのであろうレベルの「イラレ職人コロ」さん、絵具を一切使用せず鉄を赤色や青色に錆びさせて絵を描く「鉄錆師YASUKA.M」さんなど、手法が強力なアイデンティティになっています。画家やイラストレーターなどアート分野の方が「手法=アイデンティティ」にできている方が多いですね。

コピー商品が簡単に本物を上回ってしまう現代において、アイデンティティのある手法やスキルを広めるか、企業秘密として保持するかはしっかり考えた方がいいと思います。

 

#5
アウトプットされたデザインの分析

そうやって生み出されるデザインですが、「デザイン=理論」だと話すデザイナーと、「デザイン=センス(感覚)」だと話すデザイナーがいます。しかし「どちらに重きを置いているか」というだけで、これは#1で述べたように理論と感覚を掛け合わせてデザインしており、無意識のうちに両方を使い分けているのだと思います。その理論と感覚のバランスによって与える印象が変化します。
その理論と感覚を軸に生み出されるデザインはどのような要素を持っているのかを分析しました。これを見ると、失敗したものはどの視点が欠けていたのかがわかると思います。

円下部:価値(機能と情緒)
価値には機能的価値と情緒的価値があると言われます。機能的価値というのは具体的に便利だったり、事実として言語化しやすい理論的な価値です。それに対して情緒的価値は言語化しにくい精神的な側面、感覚的な価値です。

円上部:造形(構造と意匠)
何も見ずにアップルのロゴを描いてもらうと、誰もが「りんご+齧られた+葉っぱ」を描くことができます。これが構造です。しかし、葉っぱの向き・齧られている場所・細かな曲線はバラバラです。これが意匠です。これはどんなデザインにも当てはまります。理論的に組み立てられ中核的な位置づけの構造に対して、意匠は仕上げや細部など美的感覚によって成り立っています。

デザインには「古くなってしまうデザイン」と「古びないデザイン」があります。この違いは何でしょうか。この答えこそが構造と意匠です。構造というのは「時代に対する耐久性」があり、意匠というのは「時代に沿って」います。

構造のしっかりしていないデザイン……つまり「流行りに乗っかっているだけのデザイン」や「深く考えられていないデザイン」は、発売・発表された瞬間は盛り上がります。しかし、数年経てば古くなり、一部のコアな人以外見向きもされなくなります。

それに対し、構造のしっかりしていると何年経っても古びることないのです。しかし、細部は時代に合わせて変化させないといけません。有名企業のロゴの変化を見ると、少しずつ変化していますよね。「その微調整に何億円とかける必要ある?」と感じる人もいるでしょう。しかし、この時代に沿わせる意匠は馬鹿にできません。人が無意識下で感じる感覚はとても鋭いのです。

「古びない構造 + 時代に沿って変化する意匠」これこそが最強のデザインなのです。

今でも皆さんがカフェやレストランで見かけるこの一番左の椅子。これは「No.14」という椅子で1859年にミヒャエル・トーネットによってデザインされました。160年以上も昔の椅子です。右の3つも60年以上前にデザインされた椅子ですが、今も名作として愛されています。構造がしっかりしていてシンプルなものは時代を超えるという証明です。

外部矢印:体験

外部の矢印は「このデザインをユーザー・オーディエンスが受け取ったときに体験するもの」です。
上部矢印の記憶と印象は、「円上部:造形」で説明したように理論であるほど「記憶」に残り、感覚であるほど「印象」として残ります。
左部矢印の経験と認識は、作用を伴うほど「経験」になり、情報を伴うほど「認識」になっていきます。良いプロダクト・グラフィックはどれも含んでいるため過不足のないデザインに仕上がっているように感じます。

理論・感覚では、私の体感ですがプロダクトデザイナーは理論優位、グラフィクデザイナーは感覚優位の方が多いように感じます。

 

情報量が多いため、そこまで深掘りをせずサラッと説明してきましたが、ここの内容をもっと掘り下げる記事も書けたらなと思っています。

次回は、少し踏み込んで、デザインするときに知っておきたい知識や視点に関する内容を紹介していきます。

デザインとは:1(思考編)※このページです
デザインとは:2(視点編)
デザインとは:3(技法編)※執筆中

 

SPOT DESIGN 坪田将知

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